日々雑感

春の雨に思うこと

2008.03.14

春の雨が降りました。
いよいよ芽が膨らんできた練馬の木々も、しっとりと雨に濡れ、次なる新緑の季節に備えているようです。

本日は、午後から弁護士会主催の高齢者消費者被害の研修を受けてきました。

我が国は、これから超高齢化社会に突入していくわけですので、自ずと高齢者にかかわる法律問題が増加することは必至です。

したがって、いかに未然に予防するか、という観点がとても重要だと考えています。

しかし、本日の研修のお話にもあったように、高齢者が被害に遭うケースは、手を替え品を替え、次々と新手のタイプが発生するので、どうしても後手の対応にならざるを得ない、というのが実際のようです。

被害を未然に防ぐためには、国や自治体等の公的機関がもっと効果的な広告をすべきだと思います。弁護士としても、予防法務の観点から、何ができるかを考えなくてはなりません。

また、発生してしまった被害に対しては、いかに、スムーズに、可及的に、被害回復を図るか・・これも、法律家として力を注がなくてはなりません。

春の雨音を聞きながら、そんなことを考えたりしていますが、今週は、高齢者の方に関するある事件が、実質的に解決に至ったこともあり、その方の喜ばれているお顔を想像しては、私も喜びを分けてもらっています。
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立退交渉と弁護士法

2008.03.12

先般、東証2部上場の不動産・建設会社「スルガコーポレーション」が所有したビルの立ち退き交渉が弁護士法違反であったと報道されました。

この報道を契機として、おつきあいのある不動産会社の方々から、「弁護士以外は立ち退き業務をやれないのですか?」などと質問をいただくことが続きました。

弁護士法72条は、弁護士資格を持たないものが、報酬を得る目的で、訴訟事件やその他一般の法律事件に関して代理や和解その他の法律事務を取り扱ってはいけないという原則を定めています。
弁護士資格を持たないものが、報酬を得る目的で、上記の法律事件等を代理等することは、いわゆる「非弁活動」として禁止されているわけです。

具体例を調べてみると、「賃貸人の代理人として、その賃借人らとの間で建物の賃貸借契約を合意解除し、当該賃借人らに建物から退去して明渡してもらう事務をすること」は、上記弁護士法72条に違反するとした裁判例がありました(広島高決平成4年3月6日)。

法律事務の範囲や反復継続性の解釈にもかかってきますので、一概にはいえませんが、やはり、賃貸物件の明渡しの交渉は原則として弁護士が担うべきということになります。

もっとも、破産管財人をやっていると、複数の業者から「破産物件の売却から明渡しまでなんでもやります」といった趣旨のFAXがたくさん届くのですが、中には、弁護士法違反若しくはグレーゾーンでは?と首をかしげたくなる業者さんがおられるのも現実です。

立ち退き・明渡し業務を解決する専門家へのニーズがあるにもかかわらず、弁護士が対応できていないから、といった指摘も一理あるように思います。

現在、弁護士が増加しておりますが、そのうちに「立ち退き専門弁護士」というカテゴリーもでてくるかもしれません。

当事務所は、「立ち退き専門」ではありませんが、もちろん、明渡し、退去・立ち退き等についても、取り扱っております。
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ガラスのうさぎ

2008.03.10

東京大空襲から63年が経ちます。

この時期になると、「ガラスのうさぎ」というお話を思い出します。

高木敏子さんがご自身の体験をもとに執筆されたノン・フィクションです。

お父さんがガラス工場を営む家族が東京大空襲に見舞われます。
夜、火の手から逃げまどう中で、敏子は、大好きなお母さんと妹を失います。
全てが焼け失せた東京・・・工場の焼け跡からは、高熱で溶けて歪んだガラス細工のウサギがでてきます。
そのガラス細工のウサギは、お父さんが、敏子と妹のために作ってくれたものでした。
そのお父さんも、疎開途中の二宮の駅舎で、機銃掃射に遭い、亡くなってしまいます。
しかも、敏子の目の前で・・・。

私は、子どものころ、「ガラスのうさぎ」の映画を見たのですが、あまりにもかわいそうで、わんわん泣いたことを覚えています。
幸せで、仲の良い家族が、一瞬にして崩壊してしまうこと。
大好きで、かけがえのない人が、ふいにいなくなってしまうこと。
・・・そんな理不尽なことが実際におこる戦争は、絶対許さないと、子どもながらに誓ったものです。

この「ガラスのうさぎ」は、何回か映像化されているのですが、昨年、アニメ化された「ガラスのうさぎ」が上映されるとのことで、何人かの子どもたちを連れて見に行きました。
子どもたちも、やはり目を真っ赤に泣きはらし、そして、戦争のことについて、たくさん考える機会になったようでした。

感受性豊かな子どもの頃に得る衝撃は、大変に大きいものです。
私は、「ガラスのうさぎ」や「はだしのゲン」の本や映画を通して、戦争の恐ろしさを学んだ気がします。
小学校の頃には、祖父母から戦争の話を聞く、という宿題もあり、おばあちゃんが体験したこの世の地獄のような話に、眠れなくなったこともありました。

戦争を知らない世代が増えていく中、平和の素晴らしさ、戦争の愚かしさを、今の子どもたちにも、きちんと伝えていかなくては、と改めて思います。
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裁判所の食堂

2008.03.06

今日は、お昼前に霞が関の裁判所に出かけ、そのまま、午後は、弁護士会主催の研修に参加したので、その間、裁判所の地下の食堂で昼食をとりました。

民間企業等ではおしゃれなカフェテリア方式のランチルームが一般的になりつつありますが、裁判所のそれは、まさに「食堂」という表現がぴったりの、ちょっぴりレトロな感じがする場所です。

裁判所の食堂を利用するのは、実に、修習生時代以来、十数年ぶりでした。

練馬区に法律事務所を開設する前は、日比谷の事務所に所属していたので、時間が空けば事務所に戻っていたのですが、練馬にいる今は、そうもいきません。

そんなわけで、本当に久しぶりに裁判所の食堂を利用したのですが、一人で、お蕎麦をいただきながら、修習生時代のことを懐かしく思い出しておりました。

裁判所では、お昼休みになると、職員が一斉に地下の食堂を目指します(もちろん外に出る方もおられますが)。

民事裁判修習期間中、私が配属されていた民事部は、部総括(註:裁判長のこと)を筆頭に、右陪席の判事、左陪席の判事補、書記官、事務官の順に続き、最後に司法修習生が従いながら、ゾロゾロと食堂まで移動しておりました。

他方で、刑事裁判修習中に配属されていた部は、自由な雰囲気のある部でしたので、お昼休みは自由行動でした。

部によって、すなわち、部総括の個性によって、お昼休みの過ごし方にもいろいろなパターンがあるようで、とても興味深かったものです。

あの頃は、毎日、さまざまな事件記録を勉強したり、法廷に出させていただきながら、大勢の弁護士の訴訟技術の巧拙を見ておりました。

弁護士となって裁判所と接するようになり、司法修習生が法廷に座っているのを見ると、当時の自分の姿を重ね合わせ、ついつい背筋が伸びる気がしてしまいます。

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啓蟄

2008.03.05

昨年の記録的な暖冬に比べて、この冬は、そこそこ寒さが厳しく、「冬らしい冬」だったように思います。

本日の日経新聞夕刊では、この「冬らしい冬」の現象として、ワカサギ釣りやスキー客が増加したこと、東京湾のノリの養殖が好調だったこと、使い捨てカイロの販売数が伸びたこと、などが紹介されていました。

他方で、東京都内で、凍った路面で転倒して病院に搬送された人の数は、昨年がゼロだったのに比べ、今年はなんと375人もいたとのことです。

そんな冬も終わろうとしています。

そういえば、今日は「啓蟄」でした。
大地が暖まり冬眠をしていた虫が穴から出てくるころ・・・。

世の中は、着実に、冬モードから春モードに切り替わっていってますね。

春、といえば、桜、ですが、
もうひとつ、私のとっておきの楽しみがあります。

私が大好きな「春の訪れを感じる風景」は、実は、身近な石神井公園にあるのです。

それは、石神井公園のボート池のほとりの「枝垂れ柳の芽吹き」なのです。
殺風景な茶色の枝垂れ柳の枝々が、ぼわっと薄緑色に変化していく様子は、感動的でもあります。

チャンスがあれば、是非、このブログでもご紹介したいと思っています。

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手間ひまかけて

2008.03.03

今日は、桃の節句、ひな祭りです。
季節もぐんぐん春に向かっているようですね。

昨日のお休みは、久しぶりにちらし寿司を作りました。

私が小さかった頃、毎年、ひな祭りの日には、
ひな人形が飾られ、母が作ったちらし寿司でお祝いをしてもらいました。
華やかなお人形と、色とりどりのちらし寿司に、ウキウキしていた気持ちを今でも覚えています。

そんな母の味を思い出しながら、
昨日は、早くから近所のスーパーに材料を買出しに出かけ、
材料を刻み、ひとつひとつ丁寧に味を含ませていきました。
最後に、具をすし飯に混ぜ合わせ、薄い桜色に仕上げたでんぶと錦糸卵と大葉などを散らして完成!

春が我が家の食卓にも舞い降りたようなひと品ができました。

そういえば、昔は、こうやって手間ひまかけて食事を作ってきたのですよね。

出来合いのちらし寿司が手軽に手に入る時代になりましたが、
今度は、どこの材料? 添加物は? ・・・などと心配になります。

便利を手に入れた分、現代人は、大切なものを失ったのではないか・・・そんなことを考えさせらたことでした。

それにしても、スーパーでは、中国産のハマグリが400円で売られている横で国産のハマグリが半分の量で800円で売られていました・・・主婦として悩みましたが、やはり、国産のハマグリを手にとってしまいました。

食の安心安全料が高くつく時代にもなりました。

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石神井公園の緑

2008.02.28

石神井公園は、練馬区民の誇る素晴らしい公園です。

石神井公園駅から5分ほど歩くと、ボート池が見えてきます。
ボート池のさらに向こうには、照姫伝説の伝わる自然豊かな三宝寺池が広がります。

四季折々に美しい自然の風景を見せてくれる石神井公園は、練馬区にとって、東京都にとって、大変貴重な財産です。

私の練馬区での生活も十数年になりますが、練馬区に住み続けている理由の一つに、この自然豊かな石神井公園の存在があります。

そんな大切な石神井公園ですが、先日、石神井公園の北側に隣接する日本銀行石神井運動場(日銀グランド)を練馬区が公園用地として取得するという報道がありました。

http://www.city.nerima.tokyo.jp/kocho_koho/koho/press/2008/02/20080213.pdf#search=’

大変喜ばしいニュースですね!

練馬区では、平成18年、「みどり30推進計画」を制定しています。概ね30年後に練馬区の緑被率が30%になることを目指すという計画です。

練馬区は、緑あっての練馬区ですから、「練馬ブランド」を押し上げるためにも、この計画はぜひとも達成したいと願っております。

日銀グランドは4.7haもあるとのことですから、この計画を強力に後押しすることになりますね。

実際の整備は平成22年度以降になるとのことですが、どのように活用されるかとても楽しみです。

個人的には、・・・輝けるサッカー少年たちのために、緑の芝を張ったサッカーグランドが整備されるとうれしいなあ、と思ったりしております。

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薬代稼ぎの万引き

2008.02.27
もうひと組、記憶に残る姉妹がいます。

年のころは、姉は20歳くらい、妹は高校生くらいだったでしょうか。

姉妹で原宿のショッピングセンターで万引きをしていたところを、
巡回中の私服警察官に逮捕されたのです。
バーゲンセールでごった返す買い物客の鞄から、財布を抜き取るという手法でした。
一度うまくいくとやめられなくなり、被害者は10名を超えていました。

当番弁護士で待機していた私は、連絡を受けて、妹の弁護人・付添人を担当することになりました。

会ってみるとごく普通の女の子。

補導歴もなく、学校も真面目に通っており、よもや万引きをするとは・・・と周囲も驚く状況でした。

訳を聞くと・・・。

実は、姉妹のお父さんが、癌の宣告を受け、入退院を繰り返しているが、余命は長くないとのこと。せめて、一日でも長く長生きしてもらいたい、との思いから、姉と相談して、当時話題だった『プロポリス』を買って飲ませてやりたいと思うようになった。でも、プロポリスはとても高価なものなので、毎日飲ませてやるために、せっぱつまって万引きをしたのだ話してくれました。

お父さんのためを思い犯行に及んでしまったわけですが、逮捕されて冷静になってみると、万引きしたお金で買った薬をお父さんが飲んで長生きしたとしても、お父さんは少しもうれしくないことを十分にわかったようでした。

もちろん、万引きという行動は許されることではありません。
ただ、動機には斟酌すべき事情がありました。
本件犯行に至る前も、この姉妹は、アルバイトをしては、家計を助けて必死に生きていました。

本件犯行に至る経過や動機などを丁寧に裁判所に伝え、この少年は、いったん試験観察となり、最終的には保護観察で終了しました。

その後、アルバイトでためたお金で、家族4人で温泉に最後の思い出旅行に行くことができました、という手紙がきました。はじけるような家族4人の笑顔がうつった写真も同封してありました。

もう7.8年前の事件でしたが、あの少年は、もう立派な成人になっていることでしょう。
介護士になりたい、と言っていた夢はかなったのでしょうか・・・。

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スキー場での事故(その3)

2008.02.25

春一番が吹き荒れた週末でした。
練馬は、畑が多く土の露出度が多いせいでしょうか。舞い上がった土埃で、空が茶色になっていました・・・。

さて、スキー場の事故を数例ご紹介してきましたが、今回は、スキー教室に参加した子どもが事故にあったケースをご紹介しましょう。

小学校5年生と小学校3年生の兄弟が、群馬県のスキー場のスキー教室に参加しました。
日中はスキーを滑り、夕食後の午後7時過ぎから、ナイターそり遊びをすることになりました。
参加した子ども達は、指導員に滑走場所まで引率してもらい、配布してもらったそりで滑走を始めました。ちなみに、このそりは、ブレーキやハンドル装置のない一人乗りの簡易そりでした。

兄弟は、その場所からさらに上方に上ったところから、そりに二人乗りをした状態で、滑り始めましたが、その後、悲劇が起こってしまいます。

このゲレンデは傾斜角約14度の中級コース。
事故発生当時は、夜間の外気温低下により、雪面は凍結しアイスバーンのような状態になっていました。

兄弟は、加速した状態で、なんと約234メートル滑走し、ゲレンデの最下段に設置してあった防護ネットを越え、崖下約12メートルの駐車場に転落してしまったのです。

お兄ちゃんは、残念ながら頭部打撲等により死亡、弟も全治2か月の大けがを負いました。

この事案において、兄弟のご両親は、子どもたちにそりで滑走する範囲を限定する指示やそりの操作について具体的な注意等をすることなくそり遊びを行わせた点について過失があるとして、スキー教室主催会社の責任を追及しました。

裁判所は、「・・・一般に小学生以下の児童は、突発的な行動を取りやすく、そりの滑走による危険についての認識や判断能力が十分ではないから、引率者としては、ゲレンデでそり遊びを実施するにあたっては、前年度のスキー教室におけるのと同様に、そりで滑走する範囲を傾斜の緩い範囲に限定し、これを児童に明確に指示するとともに、現場においても、右範囲を雪上に見やすい標識等を設置するなどして示し、かつ、児童らが右範囲を超えて上方に行かないよう、監視する人員を配置する等の措置を講じ、もって、そりの滑走による不測の事故の発生を未然に防止すべき注意義務があった」とした上で、本件事案においては、引率者が明確な指示を与えず、監視員を配置することもなかったとして、スキー教室主催会社の責任を認めました(東京地裁平成12年7月4日)。

判断能力が未熟な子ども達が、自分自身で、起こりうる様々な危険を予想して、回避することは期待できません。子どもの安全を確保するために、大人に対する通常の注意義務よりも高度な注意義務が求められるのは当然です。

このスキー教室主催会社でも、前年度は、危険防止のために様々な対策を講じていたようです。この事故当時も、前年度と同等の対策がとられていたら、この事故は防ぐことができたかもしれず、大変に悔やまれます。

それにしても、想像を絶するスピードで、制御不能となったそりに乗っていた兄弟の心中を察すると、胸が痛みます・・・。
このような事故が二度と起こらないよう祈るばかりです。

スキーは、幼児から高齢の方まで幅広い年齢層が楽しめるスポーツです。ルールを守りながら、無理をしないで楽しむことが大切ですね。特に、小さいお子さんについては、大人が十分に注意を払わなくてはいけないことを痛感します。

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祖母が孫の貯金を引き出す??

2008.02.21

まず、「未成年後見人」について簡単に説明しましょう。こちらは民法のお話です。

未成年後見人は、未成年者に対して親権を行う者がいない場合に選任されます。例えば、早くに両親を亡くした子どもの祖母が未成年後見人になるようなケースが考えられます。

未成年後見人は、未成年者が成人するまでの間、家庭裁判所の監督を受けながら、未成年者の財産を管理し、法律行為について未成年者を代表することになります。

次に、「親族間の犯罪に関する特例」についてご説明しましょう。こちらは刑法のお話です。

配偶者、直系血族または同居の親族の間で、窃盗や横領がなされた場合は、その刑を免除するとされています。たとえば、夫が妻のものを盗む、祖母が孫のものを横領する、といった行為は、刑が免除されることになります。
これは、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控えて、親族間の自律に委ねた方が望ましいという政策的な配慮に基づいたものです。

さて、ここで問題です。

孫の未成年後見人に選任されていた祖母が、共犯者と一緒に孫の貯金を引き出して横領してしまいました。その額約1500万円。

全くの他人同士の関係であれば、これは、まさに業務上横領罪に該当する行為ですが、この祖母は、業務上横領罪として有罪となるでしょうか。
それとも、孫と祖母という親族間の犯罪であるとい理由で、「親族間の犯罪に関する特例」が適用され、祖母は刑を免除されるのでしょうか。

この点が争われた事案について、平成20年2月18日、最高裁判所(第一小法廷)が判断を下しました。

裁判所は、「・・・未成年後見人の後見の事務は、公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、・・・刑法244条1項(注:親族間の犯罪に関する特例)を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。・・・」と判示しています。

妥当な結論ですね。

今回のケースは、未成年後見人の事案でしたが、今後の高齢化社会に向けて成年後見人がどんどん増えていく状況にあります。

親族であるという甘えから、ついつい感覚が鈍ってしまうリスクも否定できない後見人業務ですが、今回の判決は、後見人の責務の重さを改めて認識させたという意味でも、とても有意義であったと思います。

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