スキー場での事故(その3)
春一番が吹き荒れた週末でした。
練馬は、畑が多く土の露出度が多いせいでしょうか。舞い上がった土埃で、空が茶色になっていました・・・。
さて、スキー場の事故を数例ご紹介してきましたが、今回は、スキー教室に参加した子どもが事故にあったケースをご紹介しましょう。
小学校5年生と小学校3年生の兄弟が、群馬県のスキー場のスキー教室に参加しました。
日中はスキーを滑り、夕食後の午後7時過ぎから、ナイターそり遊びをすることになりました。
参加した子ども達は、指導員に滑走場所まで引率してもらい、配布してもらったそりで滑走を始めました。ちなみに、このそりは、ブレーキやハンドル装置のない一人乗りの簡易そりでした。
兄弟は、その場所からさらに上方に上ったところから、そりに二人乗りをした状態で、滑り始めましたが、その後、悲劇が起こってしまいます。
このゲレンデは傾斜角約14度の中級コース。
事故発生当時は、夜間の外気温低下により、雪面は凍結しアイスバーンのような状態になっていました。
兄弟は、加速した状態で、なんと約234メートル滑走し、ゲレンデの最下段に設置してあった防護ネットを越え、崖下約12メートルの駐車場に転落してしまったのです。
お兄ちゃんは、残念ながら頭部打撲等により死亡、弟も全治2か月の大けがを負いました。
この事案において、兄弟のご両親は、子どもたちにそりで滑走する範囲を限定する指示やそりの操作について具体的な注意等をすることなくそり遊びを行わせた点について過失があるとして、スキー教室主催会社の責任を追及しました。
裁判所は、「・・・一般に小学生以下の児童は、突発的な行動を取りやすく、そりの滑走による危険についての認識や判断能力が十分ではないから、引率者としては、ゲレンデでそり遊びを実施するにあたっては、前年度のスキー教室におけるのと同様に、そりで滑走する範囲を傾斜の緩い範囲に限定し、これを児童に明確に指示するとともに、現場においても、右範囲を雪上に見やすい標識等を設置するなどして示し、かつ、児童らが右範囲を超えて上方に行かないよう、監視する人員を配置する等の措置を講じ、もって、そりの滑走による不測の事故の発生を未然に防止すべき注意義務があった」とした上で、本件事案においては、引率者が明確な指示を与えず、監視員を配置することもなかったとして、スキー教室主催会社の責任を認めました(東京地裁平成12年7月4日)。
判断能力が未熟な子ども達が、自分自身で、起こりうる様々な危険を予想して、回避することは期待できません。子どもの安全を確保するために、大人に対する通常の注意義務よりも高度な注意義務が求められるのは当然です。
このスキー教室主催会社でも、前年度は、危険防止のために様々な対策を講じていたようです。この事故当時も、前年度と同等の対策がとられていたら、この事故は防ぐことができたかもしれず、大変に悔やまれます。
それにしても、想像を絶するスピードで、制御不能となったそりに乗っていた兄弟の心中を察すると、胸が痛みます・・・。
このような事故が二度と起こらないよう祈るばかりです。
スキーは、幼児から高齢の方まで幅広い年齢層が楽しめるスポーツです。ルールを守りながら、無理をしないで楽しむことが大切ですね。特に、小さいお子さんについては、大人が十分に注意を払わなくてはいけないことを痛感します。
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