落馬は誰のせい?
「馬」続きで、「馬」に関する事件をご紹介しましょう。
乗馬クラブでおきた落馬事故のケースです。
乗馬歴としては中級程度のAさんが、B馬をゆっくりと歩行させていた時に、突如、B馬が後ろ足を蹴り上げたため(馬の世界では『尻っぱね』といいます)、Aさんが落馬して骨折等の怪我をしてしまったという事案でした。
Aさんは、長期間仕事ができなくなったため、乗馬クラブに対して、休業損害も含めた損害賠償請を請求しました。
むろん乗馬クラブ側も、できる限り安全に乗馬を楽しんでもらえるよう運営をしているのですが、残念ながら落馬事故が発生し、Aさんのように大きな事故怪我に至ってしまう場合も否定できません。
考えられる原因としては、①乗り手の問題、②馬の問題、③施設側の問題、と大きく分けられます。
①乗り手の問題としては、技量、乗馬経験、操縦ミスの有無、当時の健康状態・・・等々
②馬の問題としては、性別、年齢、去勢の有無(雄の場合)、経歴(競走馬出身か否か)、事故前の調教の仕上がり具合・・・等々
③施設側の問題としては、乗り手のレベルに合った馬を提供しているか、馬の状態を良好に保つために調教を適切に行っていたか、馬場を安全に利用できるようレベル分けしたり監視員を配置するなどの配慮していたか・・・等々。
このケースでは、①の点は問題なかったので、②と③の点について、主張立証していくことになりましたが、立証にはなかなか困難を伴うケースでした。
中でも、問題になったのは、「B馬自身」が重要な証拠となることです。
うかうかしていれば、大切な「証拠」を「処分」されてしまうことも予想されました。
そこで、すかさず、証拠保全の申し立てを行い、裁判官に、現地まで来てもらい、B馬の「検証」をしてもらうことになりました(ちなみに、「検証」とは、裁判官が、五感の作用により、直接に検証物の形状・性質・状態を観察し、その結果として得られた内容を証拠資料とすることをいいます)。
本来、のどかな風景である乗馬クラブに、背広を着た裁判所の人たちがやってきて、いろんな角度からB馬の写真をとったり、去勢しているかどうかを見るために下から覗き込んだり・・・肝心のB馬は、始終、きょとんとしておりましたが。
それにしても、当時の私は、「乗馬の経験」も「馬の専門知識」もなかったため、いくつもの乗馬クラブ等に無理を言ってヒアリングに押しかけたり、馬の専門書を何冊も読みこんだりしたことが、今となっては懐かしく思い出されます。
にわか「馬博士」を自称していた私ですが、優雅に乗馬を・・・という生活は、残念ながら、まだまだ実現しそうにありません。
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