婚外子の相続差別規定は違憲
9月4日、最高裁判所大法廷は、婚外子(非嫡出子)の相続分を嫡出子の半分とする
民法900条4号但書部分(本件規定)は違憲であるとの判断しました。
正確にいえば、平成13年、嫡出子が非嫡出子に対し申し立てた遺産分割審判事件に関連し、
遺産分割審判に対して抗告が申し立てられたが、同抗告が棄却される決定が出され、
その後、同抗告棄却決定に対して特別抗告が申し立てられたことを受け、
今般、最高裁判所大法廷が同抗告棄却決定を破棄するとの判断を示したということになります。
当事者にとっては、 足掛け12年に及ぶ裁判の結果、ついに、大きな判断が示されたということになります。
最高裁判所の考え方の要旨は次のとおりです。
相続制度は、国の伝統や社会事情、国民感情のほか、婚姻や親子関係への意識や規律を
綜合的に考慮したうえで、どのように定めるかは立法府の裁量に委ねられている。
しかし、立法府の裁量権を考慮しても合理的な根拠が認められない場合は憲法違反もありうる。
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本件規定の制定後、家族という共同体における個人の尊重がより明確に認識されてきた。
そして、父母が婚姻関係になかったという、子自らが選択や修正する余地のない事柄を
理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべき
であるという考え方が確立してきた。
↓
以上を総合すると遅くとも本件で問題となった相続が始まった平成13年7月当時において、
相続分を区別する本件規定は合理的根拠が失われており、本件規定は憲法に違反していたと
いうべきである。
最高裁大法廷の決定の全文を読みますと、昭和22年の民法改正時から現在に至るまでの
社会の動向、家族形態の多様化や国民意識の変化、諸外国の立法のすう勢、日本が批准した条約の内容、
法制等の変化、最高裁においてこれまで指摘された補足意見等々について詳細な検討がなされており、
今般の最高裁の判断に至った経緯が明確になっています。
皆さんはこの最高裁の決定をどのようにとらえられますでしょうか。
本件非嫡出子側は「幸せ」と、嫡出子側は「絶望」と対照的なコメントを出されていました。
ただでさえ感情的にも激しい対立が避けられない相続問題に加えて、
家族観や道徳観が絡む点も否めませんので、私の周りでも賛否両論、さまざまな意見が出ているようです。
ともあれ、 今後は、最高裁の決定を前提に法律改正の動きも出ることでしょう。
弁護士としては、嫡出子側、非嫡出子側のいずれの側での案件にも携われることがあります。
同決定の重みを十分に理解したうえで、事件処理を進めていきたいと思います。
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『相澤法律事務所』 弁護士 相澤愛
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