スキー場での事故(その2)
先日の連休、日帰りスキーを楽しんできました。
そのスキー場で、あわや大事故になる寸前の光景を目撃しました。
側面が崖になっている、幅の狭いコースで、スキーヤーがスキー場の設置した防護ネットを突き抜けて、崖の下に転落してしまったのです。幸い、大きな怪我はなかったようで、転落したスキーヤーは、救助のロープを頼りに崖をよじ登り、無事生還しました。
以前、スキーヤー同士の接触事故のお話をしましたが、今回は、上述の事故のように、スキー場の設備に関して発生する事故についてお話しましょう。このような事故の場合、スキー場経営会社の施設の設置管理の瑕疵(かし)の有無が争点となります。
長野県のスキー場で、大学生のAさんがスノーボードで滑走中、コースに沿って設置されている防護ネットを支える木製の丸太の支柱に衝突し、頭蓋骨骨折等で死亡する事故が発生しました。
Aさんの遺族は、スキー場側に支柱にマットなどの衝突緩和のための方策を講じていなかったのは、設置管理上の瑕疵があったとして、スキー場側に対して損害賠償を請求しました。
裁判所は、当該コースの難易度、支柱の位置、利用者数等に鑑み、このケースの場合、スキー場側が、支柱にマットなどの衝突緩和の措置を講じるまでの義務はないとして、スキー場側の設置管理に瑕疵はないと判断してスキー場側の責任を否定しました(長野地方裁判所平成16年7月12日)。
もう一例ご紹介しましょう。
鳥取県内のスキー場で、Bさんが、ゲレンデ内の松の木に衝突する死亡事故が発生しました。
Bさんの遺族は、松の木を伐採したり、松の木の周りに防護マットを敷設していなかったのは、スキー場に設置管理上の瑕疵があったとして、スキー場経営会社に損害賠償を請求しました。
裁判所は、松の木の位置や大きさ、その周囲の状況、ゲレンデの利用状況等に鑑みて、この松の木は、視認可能性が高い状態で、黒色で目立つ形で、他の木と同様に立っているものであること、通常のコース取りで滑走した場合には衝突しない状況であるといえること、初心者であっても松ノ木の近くを滑走する時は危険であると判断すれば衝突を回避することができること、等の理由から、スキー場経営会社の設置管理上の瑕疵があったとは認められないとして、スキー場経営会社の責任を否定しました(福岡地方裁判所行橋支部平成14年3月5日)。
スキー場側には、当然、スキーヤーたちが安全に滑走できるようにゲレンデを整備したり、危険物・障害物を撤去する等の安全措置を講じなくてはなりません。
しかしながら、スキーは、本来、自然の地形を生かしたスポーツですから、コース周辺には自ずと崖地等が存在しますし、自然の植栽も多数存在します。
スキーヤーの安全を確保するために、自然にどこまで手をいれるかは、まさにスキー場の地形やコースのラインや利用状況等によってケースバイケースで判断されることになります。
本日、ご紹介した2つの事案は、スキー場の責任が否定された例でしたが、次回は、スキー場側の責任が認められた例をご紹介することにいたしましょう。
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